自社システムの安定稼働を支える「システム運用保守」。しかし、専門人材の確保やコスト管理に課題を抱える企業も少なくありません。そこで注目されているのが、外部への「委託」です。
本記事では、システム運用保守の基本から、委託するメリット、主な業務内容までをわかりやすく解説。最適な運用体制を検討するヒントをご紹介します。
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システム運用保守とは?基本を押さえておこう

運用と保守の違いとは
システム運用保守という言葉は一括りにされがちですが、「運用」と「保守」には明確な役割の違いがあります。
運用
システムが日々正常に稼働し続けるように監視・点検・バックアップなどを行う業務です。主に定常的・予防的な作業が中心で、トラブルが起きないよう未然に防ぐことが目的です。
保守
問題が発生した際の対応や機能改善など、システムをより良く保つための業務です。突発的なトラブルへの対応や、システムの更新などが含まれます。
これらの違いを理解することは、適切な体制構築や委託判断において非常に重要です。
システム運用と保守の違い
項目 |
システム運用 |
システム保守 |
目的 |
システムを安定稼働させるための予防的・日常的な管理 |
システムに発生した問題の解決や、機能の改善・変更を通じた品質の維持・向上 |
主な業務 |
・システム監視 ・バックアップ実行 ・定期点検 ・稼働状況の分析 |
・障害対応 ・ソフトウェア修正 ・パッチ適用 ・機能追加や改善 |
対応タイミング |
通常時(日常的な業務として継続的に実施) |
異常発生時・障害発生時(事後的に対応) |
システム運用保守が求められる理由
デジタル化が進んだ現代において、企業活動はシステムに大きく依存しています。顧客情報や業務データ、在庫・会計・販売管理など、ITシステムが停止すると事業そのものが止まるケースも少なくありません。
そのため、システム運用保守の重要性は年々増しており、業務の安定性と継続性を守る根幹として、多くの企業が重視しています。特にクラウドやリモートワーク環境の普及により、監視や保守の範囲は広がっているのが実情です。
自社運用と委託の選択肢
システム運用保守は「社内で完結させる」または「外部に委託する」の2つの方法に分かれます。
社内運用のメリットは、自社内にノウハウを蓄積できる点ですが、専任人材の確保・育成が難しい中小企業では非効率になることも。一方で委託は、専門知識を持った外部人材を活用することで、コスト削減や業務の効率化が可能となります。
状況や予算に応じて、ハイブリッド型の導入(クリティカルな部分は社内、それ以外は外部など)も有効です。
どの企業にとっても不可欠な「業務」とは
どの業界・企業であっても共通して必要となる業務が「システム運用保守」です。インフラを維持し、トラブルを未然に防ぐ体制を整えない限り、事業の成長は望めません。
特にEC、SaaS、製造業など常時システムが稼働しているビジネスモデルでは、運用保守が事業そのものを支える重要業務です。多くの企業が委託を検討する背景には、このような業務の性質があるのです。
システム運用保守の委託で得られる4つのメリット
社内リソースをコア業務に集中できる
多くの企業が抱える課題の一つが、「限られた人材でどれだけ多くの業務をこなすか」です。システム運用保守は日々の管理や障害対応など、時間を要する業務が多く、社内エンジニアの工数を圧迫しがちです。
外部へ委託することで、社内人材を本来注力すべき業務(新規開発・企画・DX推進など)に集中させることが可能になります。これにより、事業の成長に直結するタスクへリソースを再配分できる点が大きなメリットです。
コスト最適化と固定費の変動化
システム運用保守を社内で内製化すると、人件費や教育コスト、24時間対応体制など、一定以上の固定費が発生します。一方、外部委託であれば、契約内容や規模に応じて必要なときに必要な分だけの支払いで済むため、コストを変動費化できます。
特にラボ型開発やBPOのような柔軟な委託契約形態を採用すれば、繁忙期や障害発生時のみ強化体制を敷くといったフレキシブルな運用も可能です。これにより、無駄な人員配置やオーバースペックを避けながら、費用対効果の高い業務運用が実現できます。
専門知識や技術力の確保
システム運用保守には、インフラ・セキュリティ・OSやソフトウェアの挙動に関する深い知識が求められます。しかし、すべてを社内で網羅するには限界があります。委託先は専門性を持ったエンジニア集団で構成されていることが多く、専門的な知識を即時活用できるのが強みです。
また、障害対応やトラブル時の初動などもスピーディに対応されやすく、社内対応よりも確実かつ迅速に処理されるケースが多く見られます。専門パートナーの知見を活用することで、品質と対応力の両立が図れます。
対応スピードや品質の安定化
運用保守業務の大きな特徴の一つが、緊急性を伴う対応が頻繁に発生することです。特に夜間や休日における障害発生などは、社内体制だけで即時対応することが困難です。
こうした課題に対し、24時間365日体制を敷くことが可能な委託先の存在は非常に心強いものです。監視センターを持つ運用会社であれば、アラート発生と同時に対応が開始されるため、業務影響を最小限に抑えられます。
また、SLA(サービスレベルアグリーメント)を基にした業務設計により、一定品質以上の運用が担保されるのも委託の魅力です。
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システム運用保守の主な業務内容とは?

システム運用保守には、多岐にわたる業務が存在します。ここでは、企業が委託することの多い代表的な5つの業務を分類し、それぞれの役割と重要性を解説します。
インフラ監視と死活チェック
インフラ監視は、ネットワーク機器やサーバーなどのハードウェアが正常に稼働しているかを継続的に確認する業務です。特に「死活監視」は、機器が“生きているか(alive)”をチェックし、停止の兆候を早期に発見する重要な業務です。
クラウド環境やハイブリッド構成が主流となった現在では、監視対象の範囲が広がり、24時間体制の監視が求められる場面も増えています。運用保守を委託すれば、アラート検知から初動対応まで一貫して任せることが可能です。
障害発生時のトラブルシューティング
予期せぬトラブルは、どれだけ万全を期しても起こるものです。サーバーダウンやアクセス不能といったインシデント発生時には、原因の特定と復旧作業を迅速に行うことが求められます。
この業務には、ログ解析やネットワーク診断、ソフトウェアの挙動分析など、幅広い技術と経験が必要です。委託によって、経験豊富なエンジニアのノウハウを活用できるため、対応時間と再発リスクの削減につながります。
ソフトウェアの更新とパッチ適用
OSやアプリケーションに関するアップデート管理は、セキュリティ対策と安定運用の両面から重要な業務です。パッチ適用のタイミングを誤ると、かえってシステムが不安定になる可能性もあります。
こうした作業には、事前の影響調査やバックアップ体制の整備、テスト環境での動作確認が不可欠です。委託先であれば、これらのプロセスを標準化された手順で実施しており、高品質かつ安定した更新作業が可能になります。
セキュリティ対応と脆弱性管理
外部からの攻撃や内部不正を未然に防ぐため、セキュリティ対応は必須業務です。委託することで、最新の脅威に対応するプロフェッショナルな対策が実現します。
主な業務内容は以下の通りです。
- セキュリティパッチの適用と影響検証
- ファイアウォール・IDS/IPSの設定・運用
- ウイルス対策ソフトの管理と検知ログ監視
- 不正アクセス検出と対策
バックアップ運用とデータ復旧
システム障害時や人的ミスによるデータ消失への備えとして、バックアップとリカバリ体制の整備は不可欠です。委託することで、定期的かつ正確なデータ保護が期待できます。
委託で対応される主な業務は以下の通りです。
- バックアップポリシーの策定と実行
- スケジュール設定と自動化運用
- データ復旧テストの定期実施
- 災害復旧(DR)対策の設計支援
システム運用保守の委託先選びで後悔しないためのポイント
システム運用保守の委託は、企業のIT基盤を他社に任せるという重要な判断です。コストやリソース面のメリットだけでなく、信頼できるパートナー選びができるかどうかで成果は大きく変わります。ここでは、委託先を選定する際に必ず押さえておきたい4つのチェックポイントをご紹介します。
対応範囲と契約内容の明確化
まず最も重要なのが、委託する業務の対応範囲と契約条件の明文化です。「どこまでやってもらえるのか」「対応時間はいつまでか」などの確認を怠ると、トラブル発生時に責任の所在が不明瞭になる恐れがあります。
委託契約では、SLA(サービスレベル合意書)や対応レベル(例:24時間365日/平日9-18時)などの記載があるかを必ず確認しましょう。曖昧な契約内容では、期待した成果が得られず、結果的にコスト増につながるケースも少なくありません。
過去の導入実績と体制の信頼性
委託先の過去の導入実績や対応体制の透明性も、信頼できるかどうかの判断材料になります。特に、同業種や同規模の企業との取引実績が豊富かどうかは、自社に近い課題を理解しているかの目安になります。
加えて、どのような体制でシステム運用保守を実行しているのか、たとえば「専任チーム制」なのか「共有チーム制」なのかといった点も確認が必要です。常駐サポートの有無や日本語での対応可否など、体制面は業務のスムーズさに直結します。
コミュニケーション体制の有無
運用保守の委託で見落とされがちなのが「連携のしやすさ」です。どれだけ技術的に優れた委託先であっても、報連相がスムーズでなければ本来の価値は発揮されません。
ポイントは、以下のような運用体制が整っているかどうかです。
- 日本語対応できるブリッジSEの存在
- 日次・週次の定例報告の実施
- 障害対応後のレポート提出と分析共有
- チャット・電話などリアルタイム連絡手段の確保
これらが整備されている委託先は、業務遂行の透明性が高く、信頼関係も築きやすいと言えます。
セキュリティ・情報管理の徹底度
運用保守では、業務の中で顧客データや業務システムの情報に触れる機会が多くなります。したがって、委託先のセキュリティ体制は妥協せず確認すべき項目です。
情報漏洩や不正アクセスへの対策が整っているか、具体的には以下のような点をチェックしましょう。
- ISMSなどの国際的なセキュリティ認証の有無
- 社員のセキュリティ教育の実施状況
- アクセス権限やログ管理の厳密さ
- 情報管理に関する契約条項(NDAなど)の明記
情報漏洩は企業にとって致命的なリスクとなるため、セキュリティ体制が甘い委託先には要注意です。
まとめ
本記事では、「システム運用保守」の基本的な役割や重要性、委託によるメリット、そして代表的な業務内容までを体系的にご紹介しました。
多くの企業が抱える「人材不足」「コスト増」「対応スピードの遅れ」といった課題に対し、外部委託は現実的かつ有効な選択肢となり得ます。特に、専門的な技術力・24時間対応体制・セキュリティ面の信頼性といった点では、社内での完結が難しい部分を補完する役割を果たします。
ただし、委託には信頼できるパートナーの選定が不可欠です。対応範囲の明確化や体制の確認、コミュニケーション手段の整備、情報管理への配慮を怠らず、長期的に安心して任せられる委託先を選びましょう。
システム運用保守の効率化と品質向上を図りながら、企業全体のDX推進や事業拡大へとつなげていくために、適切な委託戦略の構築が求められています。
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