IT業界を中心に広がる人材不足は、採用難だけでなく、業務の停滞や競争力の低下にも直結します。
本記事では、IT人材不足の背景を踏まえたうえで、企業が取り組むべき採用改革、人材育成、業務効率化、そして外部リソースの活用までを網羅的に解説します。自社に合った対策を見つけ、持続可能な人材戦略を構築するヒントを得られます。
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IT人材不足が深刻化する主な原因

IT業界における人材不足は、もはや一時的なトレンドではなく、構造的な社会課題となりつつあります。なぜここまで人手が足りなくなっているのか。その背景には、企業や業界の努力だけでは解決が難しい4つの要因が複雑に絡み合っています。
少子高齢化と理系人材の減少
日本社会全体における少子高齢化は、すべての産業に人材供給の制約を与えています。特にIT業界では、専門知識や技術習得が前提となるため、労働人口の減少はより深刻です。さらに、理系離れも進行しており、IT分野に進む学生自体の母数が限られています。
DX需要の急拡大による業界の人材競争
政府のデジタル庁創設や企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が追い風となり、あらゆる業界でIT人材の争奪戦が起きています。IT企業だけでなく、製造業・金融業・小売業などもデジタル化に取り組むようになり、供給に対して需要が大幅に上回る状況となっています。
教育と実務スキルのギャップ
IT人材の育成においても、日本の教育現場では実務に直結するプログラミング教育が遅れているという課題があります。企業側が求めるクラウド、セキュリティ、AIといった先端スキルを持った人材が、育成の仕組みの外に存在する状態が続いています。これにより、新卒者の即戦力化が難しく、中途採用依存度が高くなっています。
離職率の高さとキャリアパスの不透明さ
ITエンジニアは「転職しやすい職種」として知られており、優秀な人材ほどより良い条件を求めて流動します。また、社内でのキャリアビジョンが見えづらい企業では、人材が育っても定着せず、再び採用・教育にコストがかかる「負のスパイラル」が発生しています。
このように、IT人材不足は“業界だけの問題”ではなく、日本社会全体の課題と密接に関係しているのです。
IT人材の確保に向けた採用改革
人材不足の根本的な原因は社会構造にあるとはいえ、企業側にも打てる手は確実に存在します。特に採用戦略の見直しは、現場での即効性が高く、効果的な対策のひとつです。ここでは、人材確保に向けた実践的な採用改革を4つの観点で紹介します。
ジョブ型・スキル型採用への転換
従来の「ポテンシャル採用」や「新卒一括採用」では、IT業界の急速な技術変化に対応しきれません。そこで注目されているのが、職務内容に応じたスキルを持つ人材を採用する「ジョブ型採用」です。特にIT分野では、即戦力となる経験者を職種単位で募集し、プロジェクトベースで契約する流れが加速しています。
- 求めるスキルを明文化したJD(職務記述書)の作成
- 社内外の認定資格や経験ベースでの評価
といった導入が、スキルマッチ度の高い採用を可能にします。
副業・フリーランス人材の登用
フルタイムの正社員だけにこだわらず、フリーランスや副業人材をプロジェクト単位で活用するのも有効です。特にIT系では、副業が解禁された大企業のエンジニアや、独立系のフリーランスなど、優秀な即戦力が市場に多く存在します。業務委託契約であれば、採用リスクも抑えながら専門人材の力を借りることができます。
地方・海外IT人材のリモート採用
リモートワークが定着した今、地理的制約は大きく解消されつつあります。地方在住のITエンジニアや、英語で業務が可能な海外人材をリモートで登用すれば、人材不足に悩む都市圏企業でも人的リソースを確保できます。
- 地方人材:生活コストが低く定着率が高い傾向
- 海外人材:オフショア開発や越境フリーランスなどの選択肢も視野に
このように、地域や国境を超えた採用の柔軟性が競争力の鍵となります。
採用ブランディングの強化
優秀なIT人材は、複数の企業から同時にオファーを受けていることが一般的です。つまり、選ばれる企業になるには「働きたいと思われる要素」を戦略的に発信することが欠かせません。
- 技術ブログ・開発体制の公開
- エンジニアインタビュー記事の掲載
- 自社プロダクトの社会的意義の明示
などのブランディング活動が、採用競争における差別化となります。採用改革を進めることで、従来の枠を超えた人材獲得の可能性が広がります。
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IT人材を育てる!社内育成の3ステップ
採用できたとしても、IT人材がすぐに戦力になるとは限りません。技術の進化が激しい業界では、育成の仕組みづくりこそが企業の競争力につながります。ここでは、実務で使えるスキルを育てるために有効な3つの育成施策を紹介します。
現場OJTとメンター制度の整備
最も基本的な育成手段は、現場でのOJT(On the Job Training)です。ただし、業務を任せるだけでは習熟は進みません。OJTと併せて導入したいのがメンター制度です。特にIT業務では、細かい実装方針や設計判断の場面で「相談できる人」の存在が、スキル定着に大きく影響します。
- 若手エンジニアに中堅社員を割り当てる
- 定期的な1on1で進捗確認・技術の壁を可視化
といった体制を取ることで、育成と定着の両立が図れます。
外部講座・資格取得支援の導入
特定分野において専門的なスキルを短期間で習得させたい場合は、外部の教育プログラムやオンライン講座の活用が有効です。最近では、クラウド・AI・セキュリティなどの分野で、実践的なカリキュラムが多数存在します。
- UdemyやProgateなどのeラーニング
- AWS認定、G検定などのベンダー資格取得支援
- 厚労省などが支援する「人材開発支援助成金」活用
企業として「学びを後押しする文化」を醸成することで、エンジニアの成長意欲も高まります。
リスキリングとキャリア形成支援
近年注目されるのが、非IT人材のIT人材化=リスキリングです。事務・営業・製造などの部門でITツールの活用が進む中、「現場を知る人材が技術を学ぶ」という方向も現実的な選択肢です。また、リスキリング後のキャリアパスを提示することで、長期的な戦力としての定着が期待できます。
- 社内公募制度による職種転換
- 成果に応じたキャリア支援/昇進機会の提供
- 中堅人材のリーダーシップ研修とセットで実施
「社内に眠るポテンシャル」を活かせば、外部採用に頼らない組織づくりも実現可能です。社内で育てる視点を持つことで、人材の「確保」と「成長」が同時に実現します。
IT人材の流出を防ぐ!柔軟な働き方と評価制度
採用し、育成したIT人材を企業が手放してしまっては本末転倒です。特にITエンジニアは流動性が高く、働き方や職場環境に敏感です。離職率を下げ、長期的な活躍を促すには、「柔軟性」と「納得感」が鍵になります。ここでは人材定着に向けた3つの施策を紹介します。
フレックスタイムやリモート制度の導入
ITエンジニアの多くは「集中できる時間」や「自分のペースで働ける環境」を求めています。フレックスタイム制やリモートワーク制度を整えることで、ワークライフバランスを保ちつつ高い生産性を維持できます。
また、リモートワークは地方人材・育児中の人材などの活躍機会も広げることができ、人材の多様性確保にもつながります。
- リモートと出社のハイブリッド型体制
- コアタイムを絞った柔軟な労働時間管理
- 在宅手当や環境整備支援制度の整備
これらの取り組みにより、「働きやすい企業」というブランドを構築できます。
公正な評価・報酬設計
IT業界では、努力や成果が正しく報われないと感じる人材の離職が相次ぎます。成果主義と年功序列のバランスを見直し、スキル・貢献に応じた透明性ある評価制度を整えることが求められています。
- 技術・プロジェクト・チーム貢献など多面的評価
- フィードバックと昇給のサイクルを明確化
- 評価基準の開示と自己申告制度の併用
エンジニア特有の成果を正しく捉える評価軸が、人材のやる気と定着率に直結します。
組織文化とエンジニア心理への配慮
「納期や数字だけで管理される」と感じる職場では、IT人材は長続きしません。心理的安全性が担保され、相談や提案がしやすい環境こそが、チームとしての一体感を生みます。
- 上下関係よりも役割重視のフラットな関係性
- チームでの情報共有・レビュー文化の醸成
- 認知負荷が高い業務に対する理解や配慮
技術だけでなく、人として尊重されていると感じられる職場が、エンジニアにとっての「働き続けたい理由」となります。
定着率向上は、結果として育成コストの最適化や業務の安定化にもつながります。
IT人材不足を外部で補う3つの選択肢

採用や育成をどれだけ工夫しても、急な人材不足や専門人材の確保が難しい局面は発生します。そんなとき、企業の即戦力として期待できるのが外部リソースの活用です。ここでは、IT分野において代表的な3つの外部活用手段を紹介します。
SES・業務委託の活用方法と注意点
SES(システムエンジニアリングサービス)は、業務委託契約に基づいてエンジニアを一定期間アサインする仕組みです。スキルに応じた即戦力を短期的に確保できるため、プロジェクトの一時的なリソース補完に適しています。
ただし、指揮命令の所在や稼働管理の負担、属人化リスクなどに注意が必要です。単なる人月補填ではなく、スキル・プロジェクト適性を見極めたうえで活用することが肝要です。
BPO導入による業務分散
BPO(Business Process Outsourcing)は、定型的な業務や事務作業を外部に切り出す手法です。IT部門においても、ヘルプデスク、テスト業務、運用監視などをBPO化することで、社内エンジニアの負担を軽減できます。
- ノンコア業務にリソースを割かない体制
- コスト削減と人材の有効活用を両立
BPOは単なる人材不足対策にとどまらず、企業全体の業務効率化にも直結する施策です。
オフショア開発による安定リソース確保とコスト最適化
より戦略的に人材不足を解消する選択肢として、オフショア開発が注目されています。フィリピンやベトナムなどの新興国では、高い技術力と日本語・英語対応が可能なエンジニアが多数存在し、国内採用よりも安価に人材を確保できます。
特に「ラボ型オフショア開発」では、自社専属の開発チームを構築できるため、内製のような一体感と柔軟性が得られるのが特長です。
オフショア開発を導入する際の進め方や、成功させるポイントについては「オフショア開発の進め方|成功させるための重要ポイントを解説!」で詳しく解説しています。
比較表:外部リソース別の特徴
項目 |
SES |
BPO |
オフショア開発 |
対応範囲 |
技術業務(開発・設計など) |
定型業務(運用・事務など) |
開発全般(設計〜運用) |
コスト |
高め |
中〜低 |
国内の1/2以下も可能 |
柔軟性・即時性 |
高 |
高 |
チーム体制次第で柔軟に対応可能 |
管理・連携の負荷 |
中 |
低 |
初期はやや高め(体制次第) |
推奨シーン |
短期開発の一時的補填 |
定型業務の負担軽減 |
中長期のリソース確保・拡張 |
企業の課題に応じて、これらを組み合わせた外部戦略を構築することが、IT人材不足時代の現実的な選択肢となるでしょう。
まとめ
IT人材不足は一時的な採用難にとどまらず、社会構造・教育・業界全体の変化が複雑に絡み合った深刻な課題です。しかし、だからこそ企業には「今できる対策」に早急に取り組むことが求められています。
本記事では、採用の見直し、育成体制の強化、柔軟な働き方の導入、そして外部リソースの活用という4つの軸で具体的なアクションを紹介しました。これらの対策は、単に人手を増やすためだけでなく、持続的にIT組織を成長させるための投資でもあります。
特に中小企業やスタートアップにとっては、限られた予算の中で効果的に動くために「自社ですべてを抱え込まない」発想が重要です。オフショア開発やBPOなど、外部パートナーと連携しながらリソースを柔軟に調整する戦略こそが、これからの時代に適応する現実的な道筋と言えるでしょう。
自社に合った施策を見極め、まずは一歩踏み出すこと。IT人材の確保と活用における「最初の行動」が、未来の競争力を左右します。
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