オフショア開発先や開発国の選定に悩んでいませんか？
コスト削減と品質向上の両立は、多くの企業にとって大きな課題です。そんな中、タイが新たなオフショア開発先として注目を集めています。
本記事では、タイのオフショア開発の現状、適した業務、メリットと課題を解説します。さらに、フィリピンとの比較も行います。
1. タイのオフショア開発のメリット
タイのオフショア開発として、優秀なデザイナーの存在、日本との文化的親和性、そして地理的・時差的な利点を紹介します。
1.1 優秀なデザイナーの存在
タイのデザイナーたちは、創造性と細やかな感性で世界的に高い評価を得ています。彼らの特徴は、美的センスの高さと細部へのこだわりです。
タイのデザイン教育は実践的で、学生時代から実際のプロジェクトに携わる機会が多くあります。そのため、卒業時には即戦力として活躍できる人材が育っています。
また、タイのデザイナーは色彩感覚に優れています。鮮やかな色使いと繊細な色彩のバランスを巧みに操り、印象的なデザインを生み出すのです。
1.2 日本との文化的親和性
タイと日本は、文化的に多くの共通点を持っています。この親和性が、スムーズな業務連携を可能にしています。
まず、タイ人は日本文化への理解度が高いです。日本のアニメやマンガ、ファッションなどが人気を集めており、日本的な美意識や価値観に親しみを感じる人が多いです。
仕事に対する姿勢も日本人と似ています。たとえば、「和」を重んじる文化があり、チームワークを大切にします。また、「クレンチャイ」という言葉に表されるように、相手への気遣いや配慮を大切にする文化もあります。
1.3 地理的・時差的な利点
タイと日本の地理的な近さと時差の少なさは、オフショア開発において大きなメリットです。
時差は日本より2時間遅れるだけであり、リアルタイムでのコミュニケーションがスムーズに行えるでしょう。急な変更や質問にもすぐに対応できるため、プロジェクトの進行がスムーズになります。
また、日本からタイへの渡航時間は約6時間と比較的短いです。頻繁な出張や現地視察が可能になり、対面でのコミュニケーションも取りやすくなります。
2. タイのオフショア開発のデメリット
タイのオフショア開発には魅力的な面が多いですが、課題も存在します。技術力の偏りと政治的不安定さは、特に注意が必要な点です。これらのデメリットを理解し、適切に対処することが重要です。
2.1 技術力の偏り
タイのIT人材は、特定の分野に偏りがあります。たとえば、Webデザインやモバイルアプリ開発では優秀な人材が多いものの、AIやブロックチェーンなどの先端技術に精通した人材は不足しています。
また、プロジェクトマネジメントのスキルを持つ人材も少ない傾向です。大規模プロジェクトの管理や複雑なシステム開発では、日本側のサポートが必要になる場合があるでしょう。
2.2 政治的不安定さ
タイの政治情勢は、時として不安定になることがあります。2014年のクーデターや、その後の軍事政権の樹立など、過去に大きな政治的混乱を経験しています。
このような政治的不安定さは、ビジネス環境にも影響を及ぼす可能性があります。たとえば、突然の法改正や規制強化により、プロジェクトの進行が妨げられるリスクがあります。
また、政情不安による経済への影響も懸念されます。為替レートの急激な変動や、投資環境の悪化などが起こる点も考慮に入れましょう。
3. タイのオフショア開発の現状
タイのIT産業は急速に発展し、オフショア開発の新たな拠点として注目を集めています。デジタル経済への移行が進む中、政府の支援策も相まって、タイのIT市場は大きな可能性を秘めています。
3.1 タイのIT産業の成長
タイのIT産業は驚異的な成長を遂げています。市場規模は2024年に77.8億ドルに達し、2029年までに年平均成長率15.07%で、157.1億ドルまで拡大すると予測されます。特にクラウドコンピューティングやAI、IoTなどの先端技術分野が急成長しています。
デジタル化の波は、企業だけでなく一般市民の生活にも浸透しています。タイのインターネット利用者は、1日平均9時間もスクリーンに向かい合う生活を送っています。eコマース利用率は84%と世界第3位の高さです。
3.2 日系企業の進出状況
タイに進出する日系IT企業の数は着実に増加しています。ソフトウェア開発やITサービス提供を中心に、約200社以上の日系IT企業がタイで事業を展開しています。バンコクを中心に拠点を構え、現地企業とのパートナーシップも活発です。
日系企業の進出理由としては、優秀な人材の確保や、ASEANマーケットへのアクセスの良さが挙げられます。また、タイ政府の外資誘致策も後押しとなっています。
3.3 タイ政府のIT振興政策
タイ政府は「Thailand 4.0」政策を掲げ、IT産業の振興に力を入れています。この政策は、デジタル技術を活用した産業の高度化や、イノベーションの促進が目的です。
具体的な施策として、法人税の免除や研究開発への補助金など、さまざまな優遇措置が設けられています。また、デジタル人材の育成にも注力し、2024年までにデジタル人材を5万人増やす計画を立てています。
4. タイのオフショア開発に適した業務
タイのオフショア開発は、特定の分野に強みがあります。デザイン関連業務、Webサイト開発、モバイルアプリ開発の3つの分野に関して紹介します。
4.1 デザイン関連業務
タイのデザイナーたちは、創造性と細やかな感性で世界的に高い評価を得ています。特にグラフィックデザインやUIデザインの分野で秀でた才能を発揮します。
また、タイのデザイナーは3Dモデリングやアニメーション制作にも長けています。ゲーム会社がタイのスタジオと提携してキャラクターデザインを行い、独特の魅力を持つキャラクターを生み出しました。
4.2 Webサイト開発
タイでのWebサイト開発は、コストパフォーマンスの高さが特徴です。技術力と創造性のバランスが取れた人材が多く、日本企業にとっても選択肢の1つになるでしょう。
タイの開発者は、最新のWeb技術に精通しているだけでなく、ユーザー体験を重視したデザインにも長けています。レスポンシブデザインやSEO対策など、現代のWeb開発に欠かせない要素を効果的に取り入れることができます。
4.3 モバイルアプリ開発
タイのモバイルアプリ開発市場は急速に成長しています。スマートフォンの普及率が高く、アプリ利用者も多いため、開発者の経験値が豊富です。
日本企業にとって期待できる点は、タイ開発者のユーザー視点に立った開発アプローチです。現地のユーザー行動を熟知しているため、使いやすく魅力的なUIを設計できます。
5.タイとアジア諸国とのオフショア開発を比較
オフショア開発を検討する際、各国の特徴を理解することが重要です。ここでは、タイとフィリピンを中心に、技術力やコスト、言語対応力などの観点から見ていきましょう。
5.1 言語とコミュニケーション
フィリピンの強みは、英語力の高さです。英語が公用語の1つであり、多くの人々が流暢に話します。英語でのコミュニケーションがスムーズなため、要件定義や仕様の理解も比較的容易です。
一方、タイの英語力は相対的に劣ります。ビジネス英語を話せる人材は限られており、言語の壁が課題となる可能性があります。日本語を話せる人材も少ないため、コミュニケーションには工夫が必要でしょう。
5.2 技術力と得意分野
フィリピンは、IT人材の層が厚いのが特徴です。プログラミングやシステム開発など、幅広い技術分野に対応できる人材が豊富です。特に大規模なシステム開発やエンタープライズ向けのソリューション開発に強みがあります。
タイは、デザイン制作などのクリエイティブ業務に秀でています。UIデザインやグラフィックデザイン、アニメーション制作などの分野で高い評価を得ています。また、モバイルアプリ開発にも強みがあり、ユーザー体験を重視した開発が得意です。
5.3 コストと人材市場
フィリピンの人月単価は、近年上昇傾向にあります。しかし、他の先進国と比べるとまだ競争力があります。IT人材の供給も豊富で、必要なスキルを持つ人材を見つけやすい環境です。
タイも比較的低コストでオフショア開発が可能です。ただし、IT人材の確保が課題となる可能性があります。特に高度な技術を持つ人材や、経験豊富なプロジェクトマネージャーの確保は難しい場合があります。
5.4 地理的・文化的要因
タイは「微笑みの国」と呼ばれるように、おおらかで陽気な国民性があります。この特性は、チームワークを重視するプロジェクトで活きてきます。また、日本との文化的親和性も高く、日本企業との協業がスムーズに進みやすいでしょう。
フィリピンは、アメリカの影響を強く受けた文化を持っています。これは、グローバルなビジネス慣習への適応力の高さにつながっています。一方で、納期にルーズな傾向があるため、スケジュール管理には注意が必要です。
両国とも、日本との時差が小さいのが大きな利点です。リアルタイムでのコミュニケーションが可能で、業務の効率化につながります。
9. まとめ
タイのオフショア開発は、デザイン力の高さや日本との文化的親和性などが強みです。しかし、技術力の偏りや政治的不安定さといった課題もあります。
一方でフィリピンは、英語力の高さや幅広い技術分野への対応力が魅力です。開発力とコストのバランスも良いため、オフショア開発先の選定に迷ったら、まずはフィリピンの開発会社に相談してみてはいかがでしょうか。
